井上書院

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シリーズ 第59回   自著を語る

建築システム工学科 鈴木 秀三

『図解木造住宅の伏図 入門編』


 本書は,木造軸組工法住宅の伏図をはじめて学ぶ者に対し,架構全体の構成ルールと架構計
画を体得させる一助となることを意図した教材で、授業用の教科書というよりは、読者の進捗
度合に対応できる自習用教材である。
 具体的には、経験の浅い初学者に対し、3D表示した図を提示して、建物全体と各部位・部
材との関係を把握させつつ,木造住宅の架構全体の構成ルールを理解させようとするもので、
本書の特徴は,次の点にあると考えている。

@ 図面に線・記号を書き込むことの意味を,3D図によりイメージとして理解させる。
A 熟練者が頭の中で行っている伏図の検討過程の一端を,具体例に則して説明している。
B 定尺長さ・構造上の要求・施工上の制約や配慮等について、具体例に則して説明している。
C 部材断面の決定方法について,一般的な配置ルールと概算法を提示している。
D 耐力壁の量と配置について,概算的に決定する方法を提示している。
E 各伏図作成段階において,理解度を確認するための演習を付している。

 鈴木以外の執筆者は、ポリテクセンター・カレッジにおいて指導員経験をもつ職業大の卒業
生で、日頃から訓練生対象の教材開発に取組み、教材コンクールに応募・受賞するなどの経歴
をもつ者である。本書執筆は、4年前、訓練生に大工実技を教える傍(かたわ)ら、先輩訓練生
が組み上げた実大模擬家屋を教材として骨組構成等を説明していること、3D表現した図の教材
としての有効性を認めて3D化教材の作成スキルを磨いていること、嘗(かつ)て大工棟梁が使っ
ていた「間(けん)四(し)の法」のように、構造計算無しで設計者が部材断面や必要耐力壁量を
概算できる方法が必要であること等の四方山話(よもやまばなし)をしている間に、「木造住宅
を造る上で必須の伏図の考え方・描き方をいかに身に付けさせるか」が話題となり、この三者
が協力して、伏図の描き方の教材作成を思い立ったのが、その経緯である。

 初学者にとって分かり易い教材を目指して検討を重ねて得た結論は、『難しい・込み入った
事柄を身に付けさせるには、回りくどさ・重複を厭(いと)わず、ただただ丁寧に説明するしか
ない』であった。つい先日、某建築関係の雑誌で「・・懇切丁寧・・・、初学者に限らず、木
造住宅の構造を体得するための一歩として、よい解説書であると思う。」との書評を頂き、執
筆の労が報われた気持でいる。約5年前に、九州能開大在勤の卒業生とともに作った『[図解]
建築の構造と構法』(井上書院刊)も大学等での教科書採用が増えていることを聞くに付けて、
日々教えることに関して創意工夫をしている本校卒業の職業訓練指導員の底力を世に知らしめ
て、遅効性ながら体系的な職業訓練指導員養成課程の必要性をアピールして行きたいと考えて
いる。