日本工業新聞社

[自著を語る]目次へ

シリーズ 第52回   自著を語る

専門基礎学科 坪田 実

『トコトンやさしい塗料の本』

 人との出会いは面白い。数年前のPaint show (4年に1回の割合で開催される日本塗料界
最大の見本市)で、たまたま講演(融雪用ナノツボコート)をする機会に恵まれ、日刊工
業新聞社の「工業材料」編集長の目にとまった。この出会いから、数多くの方々との接点
ができ、トコトンシリーズへと発展した。シリーズのコンセプトは高校生が抵抗無く読め
る内容、要は専門用語や化学式・数式を使わないで表現することである。

  私自身は専門基礎学科に配属となり、高校生を意識して書くことは良いタイミングであ
った。共著の中道敏彦氏は訓大塗装科OBで私の先輩である。民間会社で培われた能力で、
塗料の環境対応と高機能化を論じて頂き、本書の有用性が高まった。

 思い返せば1968年に訓大(職業訓練大学校の略称。本校の旧称)塗装科に入学し、塗料
・塗装の道を歩むことになった。あの頃の先生方は著名な方ばかりで名実共に塗料・塗装
のメッカになりつつあった。科学・技術・技能を備えた塗料・塗装の技術者を大学レベル
で輩出していたのは本校が日本で唯一であり、卒研発表会ともなると、外部から多くの方
が見えた。学生は誇りに思い、やりがいのある学生時代を送ることができた。当然、卒業
生は民間会社から引く手あまたであった。

 時の流れで、本校から塗料・塗装分野に人材を供給することはできなくなったが、訓大
・能開大に渡り卒業生の交流は活発に行われてきた。そんなこともあり、この本のような
間口の広い分野の話を提供するのに同窓生は大きな力になった。

 我々の生活にとけ込んでいる塗料とはどんな材料なのか、明石大橋・航空機・自動車・
冷蔵庫・ピアノなどはどのように塗装されているのか、あるいは船、重要文化財の明治の
洋館や厳島神社の大鳥居はどのように塗替えられたのか、植栽型開発漆塗り自動車など、
話題の多くが本校卒業生の活躍分野である。思いがけない展開で、好奇心をあおり、なか
なかの圧巻であると自負している。発売後、50、100冊の単位で発注が関連メーカーから
来ている。やはり、売れることは良いことである。意地と未練の1冊であり、皆様方にも
ご一読していただければ幸いである。

          (シリーズ第53回は、電気システム工学科 高 橋  久 先生の予定です。)