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シリーズ 第50回   自著を語る

情報システム工学科 三上 直樹

「はじめて学ぶディジタル・フィルタと高速フーリエ変換」


 ディジタル・フィルタと高速フーリエ変換はディジタル信号処理の大きな2つの柱である。
ディジタル信号処理は、電気電子情報通信分野ではもちろんのこと、機械などを含む多くの分
野にとって、なくてはならない基盤技術であるが、ユーザが直接的に触れることがないので、
あまり重要さが認識されていないかもしれない。しかし、産業界では広く使われており、たと
えばモータや車の制御でも利用されている。身近なところでも、携帯電話、地上波ディジタル
テレビ放送用受信機、ディジタル・カメラ、ディジタル・ビデオ・カメラをはじめとする多く
の情報家電でも使われており、ものづくりにとって欠くことのできない技術となっている。

  ディジタル信号処理はソフトウェアでもハードウェアでも実現できるため、ソフトウェア分
野かハードウェア分野かはという区別は意味がないが、多くの場合ソフトウェアつまりプログ
ラムという形で実現されている。したがって、ディジタル信号処理が使われている製品を作る
ためには、ソフトウェアに関する諸々のことについて精通していなければならないと言っても
過言ではない。

 ディジタル信号処理関係の書籍も多く出版されているが、いきなりフーリエ変換やその他の、
一見すると難しそうな数式がたくさん出ているものが多いため、初心者にとっては敷居が高い
書籍が多いように見受けられる。ディジタル信号処理も、研究という観点からは高度な数学を
駆使しなければならないが、つくるという観点からは、それほど難しい数学は必要ない。扱う
信号を時間信号とすると、その時間に対応する変数は整数と考えてよいので、基本的な部分で
は微分や積分などが出てこないこともあり、むしろアナグロ電子回路の話よりもやさしいと言
うことができるかもしれない。 
                                  
 本書はそのようなこともふまえて、初めてディジタル信号処理を学ぼうとする読者を想定し
て書いたものであり、当情報システム工学科の学生も初めて学ぶ訳であるので、“信号処理工
学”の授業で本書を使っている。この本で学んだ学生は、関連する実習で実際にディジタル・
フィルタを作ることができるようになっている。実習ではそのほかに、ディジタル・フイルタ
の応用として、エコー発生器や周波数変換器なども作り、自分の声を入力してその効果を確か
めてもらうようなことも行っており、学生の興味を引き出すという観点でも役に立っているの
ではないかと自負している。

 文字数が限られるため、あまり本そのものについては書くことができなかったが、ディジタ
ル信号処理をご存知ない方が多いかと思い、このような文章になったことをおわびする。

           (シリーズ第51回は、能力開発専門学科 大木 栄一 先生の予定です。)