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シリーズ 第46回   自著を語る

建築システム工学科 前川 秀幸

図解大工技術を学ぶ道具・規矩・工作法」(市ヶ谷出版社)


 某生命保険会社が子ども達を対象に実施した「大人になったらなりたいもの」のアンケ
ート結果で、「野球選手」や「サッカー選手」などのような「夢やあこがれ」の職業の他
「手に職」系も人気がある。なかでも「大工」は、98年にトップを獲得して以来、常に上
位の人気をキープしている。子ども達にとって、やはり家づくりはおもしろくて、興味の
ある仕事に見えるのであろう。

 大工は、徒弟制度と呼ばれる仕組みの中で、働きながら棟梁から大工技術を学ぶのが一
般的であったが、現在では、職業訓練施設や専門学校などの教育・訓練機関で習得する若
者も多い。一軒の家を建てるには、木材や建材などの材料、加工するための手工具や電動
工具、仕口や継手などの工作法、屋根などの墨付けを行うための規矩術などに関する豊富
な知識と技術が要求される。

 大工の技術を学びたいと思うものにとっては、道具、規矩術、工作法は、それぞれ必要
不可欠な知識と技術・技能である。しかし、それぞれの内容についての専門書はあるもの
の、一冊に網羅的にまとめられたものは見あたらなかった。

 本書は、長年訓練施設において木造住宅に関連した指導を行っている研究者・指導員が、
道具・規矩術・工作法を網羅的にコンパクトに凝縮した大工技術書としてまとめたもので
ある。大工技術を学ぼうとする初心者でも、順を追って基本的な知識から高度な技能まで
学ぶことができるよう、図や写真を多用したわかりやすい表現となるように腐心している。

 特に初学者にとって規矩術は、使用される勾配などの用語が特殊で墨付け途中段階の説
明が不十分なものが多く、本当に理解し応用できるようになるまでには時間がかかるのが
一般的であった。本書では、詳細な墨付け手順だけでなく、その手順の意味や理由につい
てもできるだけ解説することにより、内容を理解し興味を持って規矩術を使いこなせるよ
う工夫している。

 実技訓練の現場における教材としてだけでなく、日曜大工を趣味とするものの手引き書
や建築大工の技能検定を受検するものの教材として、本書が多少なりとも役立つことがで
きれば幸いである。