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シリーズ 第43回   自著を語る

能力開発専門学科 谷口 雄治

「働く人の『学習』論−生涯職業能力開発論(学文社)

 もう数年前になるが、テレビのCMに思わず膝を打ったことがある。娘役の鈴木紗理奈ちゃんの指導でパソコン操作を習っているガッツ石松お父さん、思うようにいかず掌をキーボードに叩きつけ「笑顔と体力で乗り切ってきたんだぁー!」と吠える。すかさず、娘が「時代は変わったのよ」と優しくなだめる。――某パソコン・スクールのCMである。お父さん達が帰宅してホッとくつろぐニュースショーの時間帯に盛んに流された。紗理奈ちゃんに言わせた「時代は変わった」という意味を二重にも三重にも取ることができる。ともかくも、「学習」と「働くこと」との結びつきをこれほど明快に、しかもポップに示したことがかつてあっただろうか。

 さて、紹介する著書は、生涯学習をテーマとしている。だが、「生涯学習」とせずに敢えて「働く人の学習」とした。そこがミソだ。世に生涯学習に関する著作は数多刊行されている。公民館活動、市民大学講座、カルチャーセンターといった社会教育を範疇としているものが多い。つまり、そこで行われる学習は、働くこととの関係性が希薄なのである。「生涯学習=社会教育」という図式からは職業能力開発など働くこととの関わりの学習が欠落することになる。生涯学習の対象者を働く人たちに限定してみたとき、果たしてその学習から職業能力開発を除外できるだろうかという疑問が湧き起こる。そこで、職業能力開発事業の一端に身を置く私たち執筆者は、働く人々の視点からの「学習」論をまとめることにしたのである。職業能力開発を中心とした学習は、普通の働く人々にとって食う・寝る・出すことと同じく身近な普通の営みであることを理解してもらいたいとの想いから、一般書として広く刊行することにした。本書は、ソフトカバーだが、ハッキリ申しあげて中身はやや硬めになった。働く人の学習についてその考え方を強く訴えている所為だろうか。それとも、筆者の軟派光線が、ほか3名の執筆者による強力な硬派光線で脆くも打ち砕かれたことも一因だろうか。

(シリーズ第44回は、能力開発専門学科 田 中 萬 年 先生の予定です。)