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建築工学科 鈴 木 秀 三

 木質構造は木造建築物の形態の維持と構造の安全性を確保するための仕組みである。 
 合板・集成材などをはじめとする木材をベースとした木質材料を使用する木造の構造を、「木構造」に代えて「木質構造」と呼ぶことを約40年前に提唱したのが、本書の編著者であり筆者の恩師でもある杉山英男先生である。 

 本書は、長年木質構造の教育・研究にかかわってきた執筆者が、我が国の大学生の教科書として一応最高のレベルに近いものを目指して上梓したものであるが、実際には設計・施工の実務家により利用されている傾向が強い。これは性能規定化を目指したとされる建築基準法・同施行令および関連告示の制定、住宅の品質確保等促進法による性能表示制度など、木造建築の設計・施工にかかわる規定整備に対応した最新情報をいち早く収録している結果と思われる。 

 木造建築を取り巻く技術的な要求は年々詳細かつ複雑になってきており、本書もそれに対応して2000年の初版以来毎年版を改めているが,それらを理解するためには前にも増して教科書的な系統的知識が必要となってきているためとも考えられる。 

 我が国の新規住宅着工戸数に占める木造建築の割合は、年々少なくなっているとはいえ平成14年度で約60万戸である。この木造建築生産に直接に携わっているのが大工・工務店であり、その大工養成に職業能力開発施設(訓練校)が大きな役割を果たしてきたことは、残念なことに社会的には以外に知られていない。 

 本大学校では約30年前から「木質構造」の講義が行われてきているが、我が国の建築系大学で木質構造を鉄筋コンクリート構造・鉄骨構造並みに教えているところは十指に満たないのが現状である。

 最近、地球温暖化の問題から再利用可能資源としての木材が見直されているが、木造建築の健全な発展に本書が多少なりとも役立つことができれば幸いである。